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白内障とモネのめがね
2024-12-10
ブログ
以前のブログで東京へメガネの展示会に行ってきましたという話を書きましたが、東京でのもうひとつのお目当てが国立西洋美術館で開催されている『モネ睡蓮のとき』展でございました。当日は開館時間の10分前に着いたのですが、美術館を取り囲むように長蛇の列!中に入るまで1時間近く掛かってしまい、モネは日本人に一番人気のある西洋画家だという事を改めて実感しました。
余談ですが当ブログ担当者Kは美術展では必ず音声ガイドを借りる派なのですが、本展の石田ゆり子さんによる音声ガイドは内容も語り口調も本当に素晴らしかったです。
以下は展覧会概要より抜粋
印象派を代表する画家のひとりであるクロード・モネ(1840⁻1926)は、一瞬の光をとらえる鋭敏な眼によって、自然の移ろいを画布にとどめました。しかし後年になるにつれ、その芸術はより抽象的かつ内的なイメージへと変容してゆきます。
モネの晩年は最愛の家族の死や自身の目の病、第一次世界大戦といった多くの困難に直面した時代でもありました。そのような中で彼の最たる創造の源となったのが、ジヴェルニーの自邸の庭に造られた睡蓮の池に、周囲の木々や空、光が一体となって映し出されるその水面でした。そして、この主題を描いた巨大なカンヴァスによって部屋の壁面を覆いつくす“大装飾画”の構想が、最後のときにいたるまでモネの心を占めることになります。本展の中心となるのは、この試行錯誤の過程で生み出された、大画面の〈睡蓮〉の数々です。
晩年のモネを苦しめた目の病は白内障だったそうです。
白内障は加齢や紫外線の蓄積により水晶体が濁る病気で、現代では眼内レンズと呼ばれる人口水晶体を挿入する手術で視力を回復できる病気ですが、モネの時代にはそう簡単に治る病気ではありませんでした。モネ自身も白内障が進行し以前のように絵を描けなくなったときに「もはや画家の目は失われた」という言葉を友人に残しています。
この2点は同じ橋を19年の時を隔てて描いた作品ですが、右側の作品では白内障が進行し焦点がぼやけて輪郭が不鮮明になってしまっています。また水晶体が黄色く濁ったせいで補色である青や紫の色が損なわれているのが分かります。しかしこれこそがその時のモネの目に見えていた景色なのは間違いありません。
白内障の進行により失明の危機に瀕したモネは友人の勧めもあり82歳の時に手術を受け、その後亡くなるまで作品を残し続けました。
そして1924年、モネ最後の作品「薔薇」です。柔らかいブルーの色を取り戻した優しい絵です。