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熊本店

熊本店ブログ

安いめがねと高いめがねはどう違うの?

2025-02-10
ブログ
近年はスリープライスショップの進出などで安価で気軽にメガネを作ることが出来るようになりました。さばえめがね館で取り扱っているメガネにも幅広い価格帯がありますが、スリープライスショップしか利用されたことがないお客様が当店に来店されるとやはり「高いメガネ」という印象を持たれると思います。良いメガネ=高いメガネ、良くないメガネ=安いメガネではありませんが、高いメガネにも安いメガネにもそれぞれに理由があるはずです。今回はフレームとレンズに分けて高いメガネと安いメガネは何が違うのかを解説していきます。
 プラスチックフレーム編
安価なプラスチックフレームの大部分は「ポリアミド」「ウルテム」「TR90」など石油由来の樹脂で出来ています。その製法はインジェクションと言われる鋳型に樹脂を流し込んで作るという方法がとられます。特徴は弾力性が有り温度変化に強いなどがあげられます。一方高いフレームは主に「アセテート」と言われる綿花など天然由来原料の素材から出来ています。その特徴としては透明感や光沢感、カラーや柄のバリエーションが豊富で熱にあまり強くないという点があります。製法としては板状に形成されたアセテートの生地からパーツを削り出していく工程がとられます。樹脂を鋳型に流して作る方が速く、安く、大量に作れるので良さそうに思えるかもしれません。大量生産して安価にユーザーに提供するという点のみを考えれば間違ってはいないのですが、メガネはお顔に掛けるための調整が必ず必要な商品です。耳や鼻の高さや位置は人それぞれ違いますし左右非対称が普通です。なのでお顔にフィットするよう調整が必要なのですが、インジェクションで作られた商品は調整があまり出来ません(曲がらないし曲げても元に戻ってしまう)そこでアセテートの熱にあまり強くないくないという特徴(熱を加えて細やかな調整が施せる)が活きてきます。他に「セルロイド」という昔ながらの材質もありますが、極めて可燃性が高く消防法で危険物扱いとされていることから現在では鯖江でも取り扱うメーカーはかなり少なくなっています。余談ですが映画のフィルムもセルロイド製で発火しやすく、タランティーノの作品「イングロリアスバスターズ」では映画館に集まったナチスの幹部をセルロイドのフィルムを使って…という最高のシーンもありましたね〜d( ̄  ̄)
またアセテートやセルロイドは磨くと光沢が復活するという特性を持っていますので、経年変化でツヤがなくなった昔のメガネを新品のように蘇らせるのも不可能ではありません。
手前のメガネはブログ担当者Kの私物。30年以上前のメガネですが今でもツヤツヤで店頭に並べても違和感ない?
メタルフレーム編
以前は安いメガネは合金で、高いメガネはチタンというような材料による明確な線引きが存在していましたが、近年は安いメガネにもチタンを使う商品が増えてきました。チタンは鉄よりも軽くステンレスより錆びにくい、金属疲労が起こりにくく、肌へのアレルギーも少ないというメガネフレームにはこれ以上ない優れた素材なのですが、メガネとして商品化されるまでには相当な困難を要した材質でした。その理由はチタン素材は硬すぎる為に削れず、溶接は難しく、メッキも定着しないという加工が極めて難しい材料だったからです。永年に渡り培ってきた鯖江の眼鏡作り技術の上に試行錯誤で開発した新しい技術を積み重ね、1981年世界で初めてチタンフレームの商品化に成功したのが鯖江のマルマンという企業でした。そのチタン加工の技術が現在の鯖江の発展の大きな要因になったのは間違いありません。
では歴史は歴史として、同じチタンなら安いメガネと高いメガネでは何が違うのでしょうか?一番の違いは製造工程にあります。海外の工場ではチタンに熱を加えて柔らかくした後そのままプレスして一回で成型すると聞きます。熱を加えると素早く鍛造できるのですが錆びやすく、また熱が冷える工程でチタンが収縮し部品の精度にバラつきが出てしまいます。なので鯖江では常温のまま複数回に分けてプレスして徐々に完成形に近づけるという工程をとります。もちろん工程の数が増える分金型も増え時間や手間が増していきますが、出来上がったメガネの強度と耐久性に歴然とした差が表れます。

今や鯖江の高級メガネの代名詞ラインアート
レンズ
近視や乱視などの単焦点レンズでも商品による性能差はありますが、ここでは特に品質の違いが出やすい遠近両用に絞って解説していきたいと思います。ひと口に遠近両用レンズと申しましても当店で取り扱っている商品の中でも一組1万円台のレンズから10万円を超えるものまで幅広い価格帯があります。レンズですから高いものも安いものも見た目が大きく異なるものではありません。では高いレンズは何が違うのか?それはズバリ『自然な見え方=眼鏡が必要なかった頃の見え方の再現』です。遠近両用レンズの構造はレンズの上部から下部にかけて徐々に老眼度数に変化していく累進設計という方式になります。度数が変化することにより遠くから近くまで見ることが出来るようになるのですが、一枚のレンズの上下で度数が変化することによって生じるのがレンズ収差(ユレやユガミ)です。一点だけを見ている時は問題ないのに、遠〜中〜近と視線を動かした時や首を振る、歩いてみるといったアクションが伴うと見え方に違和感を感じやすくなります。そういった要素は高性能なレンズになるほど少なく、より自然な見え方に近づいていきます。それはあたかも最先端のイノベーションで開発された新薬とジェネリック薬品の違いのようなものと言えるかもしれません。
今日のような境目の無い遠近両用レンズが初めて世に出たのが1959年…以来60年以上に渡り各レンズメーカーとも積み重ねた技術で新しい製品が常に研究開発され続けています。結果そのようにして注ぎ込まれたテクノロジーやノウハウの差が高いレンズと安いレンズの違いとなって現れます。